ことばの海

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百鬼夜行#1〜見えないものを見ようとして、彼らは鬼を創り出した〜

皆さん、妖怪や幽霊は好きですか?

彼らにも存在する理由や、生まれてきた意味があります。それを考えていくと、彼らのことがもっともっと好きになっていくと思うのです。という訳で、しばらくシリーズ物として、妖怪や幽霊について書いていこうと思います。え?興味がない?ははっ、ご冗談を。

 

さて、初回は「鬼」についてです。鬼というと皆さんはどういう姿を想像しますか?桃太郎に出でくるような、ツノが生えていて虎皮のパンツを履いていて…というものが、現代人の鬼に対する最もポピュラーなイメージなのではないでしょうか。しかしながら、鬼には様々な形態があります。

 


【1.民俗学上の鬼で祖霊や地霊。
2.山岳宗教系の鬼、山伏系の鬼、例、天狗。
3.仏教系の鬼、邪鬼、夜叉、羅刹。
4.人鬼系の鬼、盗賊や凶悪な無用者。
5.怨恨や憤怒によって鬼に変身の変身譚系の鬼。】

(Wikipediaより引用)

これは文芸評論家の馬場あき子氏による鬼の分類です。

鬼という存在は非常に幅広く、姿形にも様々なものがあるということが分かります。そもそも鬼のルーツは中国で、分かりやすくいえば怨霊や悪霊のことを指す言葉だったようです。しかしながら、それが仏教陰陽道と結びついた結果、様々な形態の鬼が日本で生まれたのです。

 

と、難しい話になってしまいましたが、ここまでは「鬼は様々なものと結びついて、いろいろな形態ができた」ということを取り敢えず分かっていただければ十分です。実際私もよく分かっていませんから…笑

私が考えていることは、なぜ鬼が必要だったかということです。なぜこれだけ多種多様な場面に、それこそ売れっ子芸能人のように鬼が使われたのか、そこが今回のポイントです。

まず少し前の話に戻りますが、鬼は元々悪霊や怨霊などを指す言葉でした。日本に鬼という言葉が入ってきてからも、しばらくはその使い方をされていたのではないかと思います。ここでの鬼の属性は怨霊や悪霊と同じで「怖い・悪い・怒りや悲しみを抱えている・人ではない」というものだと思います。そしてもう1つ重要な属性があります。それは「目に見えない」ということです。目に見えないということは、鬼に姿形の定型文がないということです。すなわち、イメージする人がいればいるほど姿形に種類が生まれていくのです。

そして、持っていた属性もフルに活用されます。最初の鬼の分類を見てください。どうですか?鬼の元々持っていた属性の少なくとも1つに、各分類の鬼が当てはまりませんか?例えば「悪い」という属性は、仏敵、あるいは桃太郎の鬼のように退治される対象になります。また「人ではない」という属性は、鬼のように強いという言葉のように、まるで常人ではないかのようなという表現として使われます。

そしてその全てが、元々形のないものなのです。宗教系であれば想像のものですし、鬼のような〜という言葉も目には見えません。鬼を見た!という話もありますが、恐らくそれは鬼以外の何かに鬼を投影したもので、それはその見た人の恐怖から生まれるものであり、これまた目に見えません。すなわち、様々な種類の鬼は「目には見えないが、見えないままでは困るものを補完するために生まれた」と考えることができると思うのです。もちろん、上記の属性から外れてはいけない、という制約はあります。それがなかったら別に鬼じゃなくてもいいので…

少しお話をします。

あなたの家の近くに「夜に通った人が忽然と消えてしまう橋」があります。なぜ消えるのか理由は一切分かりません。あなたはどうしますか?調べても理由が分からなければ、恐らくその橋を夜間に通ることを避けなければいけないでしょう。では、その理由が「通った人を鬼が食べているから」だとすればどうでしょう。あなたには新しく、鬼を退治するという選択肢が生まれます。

そうです。見えないまま、理由が分からないままだと、どうすることもできない事というのは、世の中にたくさんあります。それを補完する意味で、鬼は生まれたのではないでしょうか。現在ではこのポジションの一部を、科学が担っています。ある事象に理由や原因を付与することで、対策や付き合い方、あるいは安心が与えられるということは、多々あることです。

 

この考え方は、色々な妖怪や幽霊の生まれた理由に関わってくるものだと思います。今回の鬼は、色々なパターンがあったので分かりやすいと思い、取り上げさせて頂きました。基本、私の妖怪や幽霊に対する考え方は、このようなテイストが入っているものとして読んでください。

 

次回からは、個人的には好きな魑魅魍魎たちを取り上げていきます。よろしかったら是非、また次回。