ことばの海

Twitter→@komatuuuu947頑張って書いてます。スター励みになります。コメント頂ければ幸いです。

ある荒野にて。

戦があった。さほど大きな合戦ではなかった。それでも人が争えば死人も出る、死人が出るから悲しむ者も出る。嘆かわしい事だ、と玄海は思う。噎せ返るような血の匂い。しかし、この匂いに慣れてしまったという事実が、如何に残酷なことであろうか。 仏門に入…

僻み     

彼にはこれといった信念がない。信念がないというより、それを探し回って迷っているような印象を受ける。精神的な芯がないわけではない。寧ろ彼は、他の人間よりも強靭でしなやかな芯を持っている人物だ。しかし、その拠り所が問題なのだと、私は思う。 私が…

スイングをする理由

私は両手に懐かしい衝撃を感じていた。振り抜いたバットは、やや遠回りをしてボールの底面を擦った。ボールは激しく回転しながら視界の端に消えていき、背後でガシャンと音を立てた。久しく忘れていた感覚を思い出すことは楽しい。そして、意外にも自分のイ…

臭いと非日常

厭な臭いがした。何度か感じたことのあった臭いだったが、それでも厭だった。しかし、よくよく考えてみると、厭なのではなく、慣れない臭いだったといった方が的確な表現なのかもしれない。 私は三人の友人と共に居た。三人とも高校以来の仲である。時々こう…

出会い。

人と人とが繋がる瞬間というものは、例外なく美しいものである。大学生になった私は今までの人生とは比べ物にならない程の、「出会い」を見てきた。野球場の見える公園で、今日もまた、私は人の出会いを見ることになる。 学生とは基本的に群れるものなのだろ…

「人」嫌い

電車から流れ出でくる無数の人々を見送りながら、私は立っていた。それらがエレベータを下っていく様は、本当に車体から何かの液体が噴き出て伝い落ちているようにすら思えてくる。夜のホームには冷たい風が吹いている。あの流れに飲まれてしまえば、この素…

深海魚

雨が上がった夜の街を、私は走っておりました。アスファルトは黒々と濡れており、そこから立ち上ってくる冷気が足首にまとわりついてくるのを感じます。心なしか、浮かんでいる大きな月も水を湛えているようにも思えました街中が水気に満ち満ちていて、まる…

染みつく。

名前の横に五桁の数字をサインする。これにより私は、人生の中の貴重な数時間を削り取って、労働という行為に身を投じることになる。「こんばんは。今日も一日よろしくお願いします。」 何度目だろう。決まりきった挨拶は、相も変わらず口から零れ落ちていく…

出会ってしまった芸術

突き刺すような鋭い音が鼓膜を襲う。閉鎖された暗く狭い箱の中。人々の叫び声。汗はあふれ出て留まることを知らず、滴が鎖骨まで滑り落ちる感覚を、確かに私の肌は感じ取った。六本の弦の上を、彼女の細い指が踊る。その指はあまりにか弱くて、自らがかき鳴…

何故書くのか。

白い球体は地を這うようにこちらに向かってきた。それは小さな砂の粒を弾き飛ばし、不意に飛び上がった。体が無意識に反応し、身構える。刹那、左肩に衝撃が走る。痛みは感じない。今、この痛みは感じる必要のないものだからだ。私の体に当たったボールは地…

AKG20周年記念 『春』

私がその風変わりな少女と初めて出会ったのは、とある病院の中庭だった。 「この花は、何という花ですか。」 それが彼女の発した最初の言葉だった。 私は出版社に勤務している。昔から書き物をすることが好きで、いつかは小説家になりたいと思っていた。いや…

「目」【参】

生暖かい風が強く吹き付ける。地下鉄のホームは無機質で、それでいていやらしい程に生臭い。人という生き物から滲み出た諸々の滓や芥が、この薄暗い空間に溜まっているのだ。毎日の通学には、この地下鉄と最寄り駅へと繋がる線を使う。大学はわりと都会の方…

年末年始奮闘記 2

温泉旅館に来たのなら、まずは温泉に入るべきである。これは殆ど動かすことのできない道理だろう。何故なら、温泉が嫌いなら温泉旅館に来る必要が無いからである。突き詰めるならば、温泉に入りたいからこそ温泉旅館に宿泊するのだ、と言っても過言ではない…

AKG20周年記念作品のお知らせ。

私の敬愛するバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが結成二十周年を迎えました。テンションが上がってしまったので、アジカンにまつわるワードを出来るだけ使って、短編を書こうと思い至りました。最後までお付き合い頂ければ幸いです。

年末年始奮闘記 1

山間の道を車で進んでいくと、目的の建物がそびえ立っていた。冬の山々は殺風景で、これで雪でも降っていれば多少絵になるのだろうが、あいにく暖冬のせいなのか今シーズンは一度降ったきりである。遠くを見渡すと、丁度幼稚園児が無造作に作った砂山のよう…

「目」 【弍】

整然と並んだ林檎を見つめながら、芳賀は思う。林檎に最初に「林檎」という名前を与えた者は誰なのだろうか。考えたからといって、答えが見つかる訳ではない。正直、どうでもいいことである。バイト先でこのような事を考えて居るとは、ほかの誰も思うまい。…

穴が、穴が怖いのです。 ええ、そうなんです。いつの頃からなのかは、すっかり忘れてしまったのですけど。 なぜ怖いのか・・・・・・そうですね。 例えば、世界の裏側で誰かが泣いていたとしても、私たちはそれを知る術はありませんよね。 一人でいるとき、もし自…

続・嫉妬しますよ、その文才。

優れた文章とは、私にとって絶望である。 最近の若者は読書をしないという。確かに、様々な娯楽が手軽に楽しめるようになった世の中、わざわざ何時間もかけて紙の束を一枚一枚丁寧に剥がし、そこに書かれた文字の羅列を延々と読んでいくという作業に、万人が…

冬と病熱

先日、私は喉を患いました。毎年のことなのですが、昼夜の寒暖差が激しくなるこの頃、喉を痛めては発熱するというお決まりのパターンがやってくるのです。 日曜日だというのに外に出かけもせず、日がな一日布団の中と自分の部屋の中だけで生活をしていました…

「目」【壱】

芳賀俊介は憂鬱だった。明日が試験の日だったからだ。試験と名の付くものたちとは、高校でお別れするものとばかり思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしく、大学でも定期的に奴らの恐怖に晒されている。 芳賀は悩んでいた。なぜ悩むのかというと、…

百鬼夜行#3 〜寿司になった妖怪〜

皆さんお寿司は好きですか? 今の時代、ありとあらゆるところに回転寿司屋があり、リーズナブルな値段で寿司を楽しむことができます。しかも最近の回転寿司屋も様々な工夫を凝らし、鮮度などの品質も向上していて、中々おいしいなぁと思う私であります。 寿…

ナンバーワンを目指さなくてもオンリーワンになれるのか?

先日、SMAPの解散が発表されました。国民的人気グループであり、その歌やメンバーの言葉に救われた方や勇気を貰った方はさぞ多いことでしょう。 さて、彼らの有名な曲に「世界に一つだけの花」というものがあります。日本人なら一度は聴いたことがあるであろ…

無題

誰かが自分に向かって、他の誰かの悪口を吐いていると、自分はまだ大丈夫なんだな、と思ってしまう。

無題

幸せは 続かないから幸せなのだ 続けばそれは平凡となり 日々の中に埋没するばかり

百鬼夜行#3【序】

「匂い?」 村山は頬張ろうとした焼き鳥の串の動きを止めた。村山は会社の先輩にあたる。アルコールには強くないくせに、上司に小言を言われた日は決まって呑みに誘ってくる。彼が小言を言われない日はまずないから、断りでもしない限り僕に休肝日は訪れない…

百鬼夜行#2〜時代が生んだ怪鳥〜

第2回は「以津真天」(いつまで)についてご紹介します。 以津真天が最初に登場するのは「太平記」の中の記述です。1334年、疫病が流行し、死者が多くでた頃に、巨大な怪鳥が現れます。その怪鳥は「いつまでも、いつまでも」と鳴き続け(そんなわけあるかいな)…

お知らせ

百鬼夜行シリーズは【序】という短編で紹介する妖怪のお話をした後、考察の部分を投稿する、という2部構成でいこうと思います。 よろしければ、是非。

百鬼夜行#2【序】

戦があった。 さほど大きな合戦ではなかった。それでも人が争えば死人も出る、死人が出るから悲しむ者も出る。 嘆かわしい事だ… と玄海は思う。仏門に入り3年。それなりに村の者にも慕われてきた。玄海はそこそこの規模の村の、これまたそこそこの大きさの寺…

分岐器の人たち。

あぁ、この人に出会ってしまったから自分の人生が変わったのだろうなぁ…という人たちは意外と多くいる。人生を左右する、というとそれは言い過ぎだとは思うが、それでもこの人と出会わなかったら絶対にいまの自分を作る要素の、少なくとも1つは欠落していた…

百鬼夜行#1〜見えないものを見ようとして、彼らは鬼を創り出した〜

皆さん、妖怪や幽霊は好きですか? 彼らにも存在する理由や、生まれてきた意味があります。それを考えていくと、彼らのことがもっともっと好きになっていくと思うのです。という訳で、しばらくシリーズ物として、妖怪や幽霊について書いていこうと思います。…

旅立つ夏への手紙

なんとなくだるい。 夏はそんな季節だ。 半透明な薄い膜が、絶えず身体を覆っていて、その膜の中には、自分しか感じえない暑さとだるさの入り混じった液体とも気体ともつかぬ何かが、まるで浮遊霊のように漂っている。その膜は破れることはなく、いつまでも…

若者の話

よく「最近の若者は」と言われる。 私自身、一応若者の部類に入るだろうというわけで、世間が今の若者に対してどういう感情を抱いているのか気になるところではある。 歳を重ねている方々も、時代を辿れば若者だった時期があるわけで、きっとその時も「最近…

リンゴと切り身と厭な思い出

リンゴって素敵だと思うんですよ。ほら、日本の果物といえばリンゴじゃないですか。まぁ完全に独断と偏見で言っていますけど、とにかくリンゴなんです。外見は真っ赤。赤は目を引きますよね。 「紅一点」という言葉があります。この言葉は「男性の集団の中に…

嫉妬しますよ、その文才。

「文字で表現するより、言葉で表現することを得意とするタイプ」 なのだそうだ。 もちろん私が、である。 言葉で表現することが得意なら、文字で表現することだって得意な筈だろう?まぁ、この結果は、俗にいう性格診断テスト的なもので得られたわけで、特に…